どうも、せんしゅです。今回は、先日書いた通り、読了本について、要約だとかメモだとかを書く感じの記事です。
リサーチリテラシーだとかクリティカルリーディングだとかに関する本で、ずいぶん昔に買って、一応おおかた読んではいたけど通読はしていなかったものです。初版2000年ながらとても面白くためになる。
「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ / 谷岡一郎
社会調査や統計データは、新聞やニュースで見るような比較的信頼度の高そうなものでも、調査方法や分析方法が誤っているもの、あるいは分析者や発信者によるミスリードを誘うものが大半である。本書であげられる豊富な実例を通して、どうすればより実態に近い調査ができ、またどのようにそういった情報を素直に信じないような批判的視点を持つのかを学ぶ。
筆者の主張は以下の通り。
- 世の中の社会調査の過半数はゴミである
- ゴミは参照・引用され新たなゴミを生む
- 調査の全てのプロセスにわたり生じる様々な偏向(バイアス)によりゴミは生まれる
- 正しい社会調査の方法論を知るべきだ
- 社会調査の価値を見極められるようになるべきだ(リサーチ・リテラシーの習得)
世の中にあふれる社会調査の過半数は無価値である。その無価値なものを大量生産しているのは、学者や政府・公官庁、社会運動グループ、マスコミ等だ。
そして(自分たちの行った調査を含む)それらを、マスコミが内容や調査方法を大して吟味せずに、あるいは故意に悪用して記事にする。その対策としては、調査方法・結論の妥当性を確認し、外部へのデータ公開・質疑応答にを行うチェック機関の設置が有力である。
さて、調査には様々なバイアス(偏向=実態からのズレ)が存在する。完璧な調査などありえず、このズレを最小にしようとするのが社会調査方法論である。
バイアスは、モデル構築(理論から仮定を導くプロセス)、リサーチ・デザイン(モデルに従いデータを収集・分析するプロセス)、プレゼンテーション(結果を発表するプロセス)の3つの流れの中から無数に生じる。本書では代表的なものが紹介されている。
・モデル構築
社会科学における検証プロセスは演繹的に行われるべきである(仮説は帰納的にたてられることが多い)。しかし、仮説の前提となる事実関係について、相関関係と因果関係を取り違えてしまうというミスがよく犯されている。
相関関係x↔y:変数xの変化に対して、もう一方の変数yが同時に変化する関係
因果関係x→y:変数xの変化がもう一方の変数yの変化を引き起こす関係
相関関係x↔yに対して、xとyの関係はx→y以外に、
1. x←yである(逆方向)
2. x→z→yやx↔z→yである(隠れた変数/真の原因)
3. z→xかつz→yである(スプリアス効果)
4. 単なる偶然(社会科学における統計は有意水準5%であり、偶然も生じうる)
また、時間軸を分析に加えるときは見せかけの相関(擬似相関)に注意。
・リサーチ・デザイン
どうやって知るかの計画についてであり、
1. 時期・回数(cf. 1回のみ:シーズナブルバイアス、メモリーイフェクト、トランスレイションバイアス。パネル式調査:成熟化、パネル劣化)
2. データ収集方法(cf. 測定方法:主観。自記式:母集団の偏り→解決策として学校のクラス等。他記式:インタビュアー効果、インストゥルメンタル・ディケイ=人間によるごまかし。)
3. 質問票(cf. 言葉:あいまいさ、誘導的質問、二重質問。選択肢:強制的選択、MECEでない。レイアウト:キャリーオーバー効果)
4. サンプル抽出(cf. ×数が少ない、母集団がわからない、比較できないサンプルの使用、代表的な意見を反映していない→○十分な数、母集団が定義されている、回収率が高い、確率標本である)
5. 分析(cf. 偏向を持ってデータを取り扱う)
の5項目を含む。知りたいことがはっきり決まっていれば、予算と時間の制約のもとで、調査方法は自動的に決定することがほとんどである。
リサーチが本物か見極める能力、すなわちリサーチリテラシーは、社会調査と情報のあふれる現代でこそ重要である。今後はあふれるデータの中から真に必要なものをかぎわける能力、セレンディピティが必要となる。情報を得る能力ではなく捨てる能力が重要だ。
また、社会調査を減らすためにはデータの相互利用、GSSデータの作成等が有効である。