昔取ったポカリスエット柄

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2024年7〜8月の相場を記録しておく

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※9月の頭にこの記事を書き始めたけど、その週の米雇用統計が悪かったせいで9月2週目の下落対応に追われている間に書き上げるのを忘れていた記事です

植田ショックだとか令和のブラックマンデーとか言われた8/5前後の相場と、自分がどういった行動を取ったかを記録しておきたい。
ベテランの投資家が、記録を残していないせいでITバブル崩壊リーマンショック、チャイナショックのときにどう振る舞ったか詳細には覚えてないという話をしていたので、たいしたことはしていないが自分の備忘も兼ねてメモをしておく。
断りがなければ日時は日本時間で書くが、ちゃんと確認しながら書いているわけでもないので多少の認識違いがあるかもしれない。

7月の日銀利上げまで

7/11に終値42,224円と前日に引き続き史上最高値を更新した日経平均は、翌日以降、一見大きなファンダメンタルズの変化もないまま下落を続けた。
7/11の夜に発表されたアメリカのCPIが米利下げ期待を高める結果だったことにあわせて、日銀は為替介入を行い、161円台から1時間足らずで157円台まで円高に振れた。また同日、SOX(半導体)指数も下落した。
7/17には国内外で次期首相有力候補と目されていた河野大臣が「日銀は利上げすべき、円安は許容できない」とブルームバーグのインタビューで主張した。茂木幹事長も同じ頃、利上げに言及した。異例の言及の連続で、為替介入以降円高方向に動いていた為替は更に円高に振れた。
7/24の明け方に発表されたテスラの決算は悪かった。CPIの後、高金利下でも力強い成長によって高い株価が許容されていたマグニフィセントセブンの株価は軒並み下落していた。代わりにラッセルが上昇し、アメリカでは小型株への資金流入が見られた。
7/26の金曜日の時点で、日銀政策決定会合を翌週に控え、日経平均は3段下げ、高値から10%の下落となっていた。

この週末時点で私は、7月の日銀の利上げをマイナーシナリオと認識していた。
ロイターの英語版では「きわどい判断」とする記事もあったようだが、前回の決定会合で発表した国債の買い入れ減額の具体的な施策決定も控えており、6月にその可能性に言及があったとはいえテーパリングと利上げを同時に実行するとは考えにくかった。国内指標においても個人消費や賃金等に弱さが見られ、また特段のリークもなく(マイナス金利解除の時も含め、リークをもって市場との対話とするのはどうかと思うが)、市場もそれほど利上げを織り込んでいなかったと思う。

日本株の取り扱い方

自身の日本株ポートフォリオにおいては、2024年に入ってから方針を変え、基本フルポジを取り、短期(〜半年目安)ポジションの一部と超短期(〜2週間目安)ポジションを信用で持つ形で薄くレバレッジをかけて運用していた。この運用方針は、以前は仕事の都合上できなかった短めの時間軸でのトレードにおいても大怪我しなさそうだという感触を得たことと、年初時点で2〜3年スパンで日本株に強気だったこと、2023年の上昇の取り逃がしが大きく、市場平均に勝てなかった反省をふまえてのものだ。

7月に入って、相場の上昇に伴い4〜6月に建てた短期・超短期の信用ポジションの利確が進んでいた。7/11以降も、為替トレンドの転換や日銀利上げ等のリスクに備えたポジション全体の縮小のため、目標株価に近づいたいくつかの中期目線の銘柄の利確をはじめていた。幸い下げの影響をあまり受けないまま7/19までには処理が進み、6月末時点で日本株に振り分けている資金に対して約120%の買いポジションを持っていたのに対し、108%程度まで買いポジションを縮小していた。
うまくポジションを縮小できたのがよくなかったのか、7/22以降の下落に対して、超短期のポジションを改めて建てたり、下落幅の大きい監視銘柄を新規に購入したり、下の方の抵抗線付近に入れっぱなしにしてある短期目線の買い指値が約定したりして、7/26までにまた6月末同様約120%までポジションを持ち直してしまっていた。日経平均が高値から10%、6月末から5%下落している中ではある程度コントロールできていたと言えるかもしれない。

日銀の利上げの可能性を低いと思ったがために、週明けも超短期のポジションを売り買いしたくらいで、7/30の引けまでに多少ポジションを減らした程度だった。

日銀利上げ〜植田ショック

7/31の日銀金融政策決定会合については、30日の深夜、NHKがリーク記事を出し、その後26時に日経がリーク記事を出していた。31日は下の方で寄り付いたが、私の見立てより市場は利上げを織り込んでいたのか、思ったよりしっかりしていた。 昼食をとりながら会合結果を見ようとしたところ、日銀のHPが落ちたのは印象的だった。全く繋がらないものだから、代わりにfxのアプリでドル円を眺めて大きく動いたらまた見に行けばいいやと思ったのを覚えている。
後場の途中で発表された会合結果を受けて下げる展開になるかと思いきや、14時過ぎにアメリカの対中半導体規制から日本とオランダは除外されるというニュースが流れたことで半導体株を中心に反発し、この日は日経平均終値+567円と前日比+1%以上で引けた。「この終値の上昇がテクニカル上の下落シグナルの発生を1日遅らせ、テクニカル重視の人にとっての8/5の悲劇を助長したかもしれない」という趣旨の投稿が8/6頃にXで流れてきたのも印象に残っている。
この日の午後は仕事の打ち合わせ続きだったので、夜になってから引け後の植田総裁の会見を確認した。それまで丁寧に取り扱っていた需給ギャップの議論を放り投げ、実質金利のマイナス幅が大きいことから今後も利上げを継続するという印象だった。政治圧力に押されて、金融政策が本来避けるべき(とはいえ現実的には無視もできない)円安対策として利上げしたという印象が強く、この局面での継続利上げ宣言は、昔からとにかく早く利上げしたがる日銀の体質や、口先による更なる円安対策の側面を鑑みても、いささかタカ派への振れ幅が大きいように感じられた。

続く8/1、8/2の下落は大きかったが、仕事が忙しく相場を見る時間がほぼ取れず、2日とも下の方に置いておいた指値が大量に約定した。
8/1の夜時点では、日経平均の短期的な下値の目処として直近4月の下値かつ200日移動平均線近辺の37,000円、それを割れば2023年後半のレンジ高値の34,000円近辺まで8月のうちに落ちかねない、くらいのイメージだった。
ところが、8/2の終値で35,909円とあっさり37,000円を割り込んでいた。想定より下落スピードが早く、また2日連続の全面安だったが、まだこの時点では今年に入って上がりすぎて買えなかった長期目線の監視銘柄を少し拾えていたことに対する喜びもあった。
一応34,000円の次を31,000円近辺、その次を26,000円近辺と想定して、そこまでは他口座から日本株に資金移動して信用で買い下がるつもりのペース配分をしていた。そこを突き抜けてPBR0.8倍相当の20,000円まで万が一落ちるようなことがあれば身動きは取れなくなるが、それほどのことが起きたようには思えなかったし、それまでに日銀や政府が火消しに走るであろうという考えもあった。
私のポートフォリオの現物にはベータ(指数との相関)の低いバリュー株が多く、仮に日経平均topixがそこまで下落したとて同じ下落率にはならない可能性が高いことも精神的なバッファーになっていた。

いよいよ雲行きが怪しくなったのは8/2の夜、米雇用統計が出たときだった。失業率は市場予想4.1%を下回る4.3%、非農業部門雇用者数は前回結果を下方修正した上で予想175千人を大きく下回る114千人。景気後退懸念が高まり、ドル円は149円近辺から一気に147円まで円高に振れた。今回の雇用統計前後までほとんど聞くことのなかったサームルールなる景気後退シグナルにヒットしたという発信が流れ、SNS(X)でも月曜はブラックマンデーだというポストが目立った。
ハマス指導者のハニヤ氏がイランでイスラエルに暗殺されたという7/31引け後のニュースについて、その後も中東情勢の緊迫度合い/戦争リスクが高まっているという報道が続いていたことも嫌なニュースの重なり具合だった。

幸いその週末の日曜日は予定がなかったので、カフェにこもって週明けの買い指値をせっせと設定した。週明け大きくマイナスという見方には同感だったが、どれだけ情報やデータを漁っても、一連の悪材料が既存のシステムの破綻を示すものには思えなかったので、粛々と買い増すつもりだった。寄り底でそこが1番の買い場でしたとなってもいいように、いくつかの銘柄は高めの位置に指値を置いた。

8月5日

週明け8/5は、前週に続き、朝から30度を超えるような蒸し暑い日だった。
9時前の段階でストップ安がほぼ確定しているような保有銘柄もあり、9時を過ぎても特売りばかりで、値幅が更新される3分毎に買い指値の約定通知がくるような状態だった。私が寄り付きで買った中で1番最後に寄り付いたのは9時18分だったと思う。

これは尋常じゃない、と思ったのは9時半過ぎの時点で三井住友FGがストップ安を付けたニュースが流れてきた時だ。元々他のメガバンク2行と比べて割高な位置にあったとはいえ、SBI証券のアプリに表示される「8,162↓-1,500(-15.52%)」の文字は強烈だった。8/2に発表した決算も、期待されていた上方修正こそなかったが大幅増益だったはずなのに、時価総額10兆を超えるバリュー株が、まるで話題の中小型株が決算でコケた時のような勢いでストップ安になっていた。メガバンクがストップ安を付けているのをリアルタイムで見たのははじめてだった。
この日は幸い、打ち合わせ1件以外の予定がなく、作業にも余裕のある日だったので休憩のたび定期的に相場を確認することができた。三菱UFJや三井住友FGのような反発の大きい銘柄で一桁%の値幅を何度か取りつつ、午前中は過ぎていった。

仕事をしていたので気付くのが遅れたが、後場に入って一気に売りが加速した。
14時頃だったと思うが、ふと休憩に席を立ったタイミングで約定通知を確認すると、日曜日のカフェでかなり下の方に置いたつもりの買い指値に加え、念のためストップ安近辺に置いておいたような大型株の買い指値まで複数約定していた。この瞬間は率直に言って恐怖を覚えた。どの指値も、もしその銘柄が急落するようなら買おうと思っていたわけだが、全体のポジション量を調整しながら買っていくつもりだったのであって、なんでもかんでも今日買えるのは想定していない。
明らかに売りが売りを呼んでいる状態で、今日新しい悪材料が出たわけでもなさそうなのにここまで感情的に一気に売られるなら、明日は反発の可能性が高いと思った。一方で、ストップ安の銘柄が多過ぎて日経平均より先物の方が1,000円以上安くなっており、今日売りたくても売れていないポジションやロスカットによって明日も下落が続く可能性もあった。
万が一明日も相場の自由落下が続けば日経平均26,000円まで付いていけなくなるので、「念のためストップ安近辺」で買えてしまった銘柄は一瞬反発したものから全て利確した。また、一部の自信がなかったり特に戻りが弱そうな信用ポジションを損切りして(これに関しては事前の準備不足で、後から振り返ると見当違いな見立てもあった)、全体のポジション量を調整した。

引けて日経平均終値は4,451円安(△12.4%)の31,458円。ドル円も144円台から142円台まで急落。1日の下げ幅としては1987年のブラックマンデーを超え歴代1位。下げ率で見てもブラックマンデーに次ぐ歴代2位で、多くの相場にいる人間にとって経験したことのない下落率だった。インバースETFストップ高になっているのは意味がわからなくて笑ってしまった。

場中でそれなりにポジション調整をしたが、それでも充分な買い越しになっていた。200%弱の買いポジション。
8/1,2,5の3営業日で、普段の損益より1桁多い損失が出ており、日本株単体でもポートフォリオ全体でも年初来損益がマイナスに突き抜けていたが、まだ追加入金の余力があり、改めて計算し直してもここから26,000円まで20%弱下落したとして、充分買い増しながら付いていける。夜そこまでの計算ができた時点で一息ついた。

8/5夜の米国市場はVIX(恐怖指数)が60まで急騰する場面もあったが、最終的にS&Pで前日比3.5%の続落で引けた。日本市場の暴落ほどは下落せず、日経平均先物は急反発の兆しを見せていた。

8/6の反発

8/6はその兆し通り朝から急反発した。朝一で売りの指値がいくつか約定しており、その分前日に引き続き朝から弱い三井住友FGを買い増した。たまにストップ高に張り付いたり剥がれたりする銘柄で小さい値幅を取りつつ、1日かけて8/5に買ったポジションを半分程度利確した。
8/5の後場の下落の仕方とその後の海外市場の反応を見るに、この暴落はすぐ全戻ししないにしても単なる行き過ぎだった可能性が高そうに思えたが、いわゆる「デットキャットバウンス」でその後ずるずる下がる可能性もあるので、信用部分は一部利確せざるを得なかった。現物だけならさておき、信用での一撃死を避けるためには仕方ない。それでも喉元過ぎればなんとやらで、9月になってから振り返ると、少しバットを短く持ち過ぎたかもしれないという気持ちも芽生えている。

この日の日経平均の上昇幅は歴代最高の3,217円高(+10.2%)。34,675円で引けた。

8月相場その後

バットを短く持ち過ぎた結果、三井住友FGは8/7に全利確となってしまった。日本の利上げというこれからのテーマにも合致しており本当は少し長期で残したかったが、気付いたら売り指値が全て約定していた。10%以上値幅を取れた建玉もあったので、超短期の取引としては良い結果となった。とはいえ、8/7引け時点での日本株ポートフォリオトータルは、8/1から大きく買い増しはじめているので、まだ前月比マイナスだったが。
ちなみに 「タワー投資顧問の運用部長として知られる清原達郎氏が8/6に三井住友FGを105億買っていた」という記事が8/8に出たあたりから(他に材料があったのかもしれないが)三井住友は下値を一気に切り上げたので、買い戻しの指値が約定することはなかった。

8/8の夜発表された8/3週の米新規失業保険申請件数は23.3万件と市場予測の24万件を大きく下回り、米雇用市場の底堅さを示す結果となった。雇用統計で高まった景気後退懸念は和らぎ、8/6の急反発後ふらふらしていた相場がひとまず上を向いた感触があった。

それ以降は短期・超短期の買いで小さい値幅を取りつつ、市場の回復に合わせて全体のポジション量を減らすことで、相場の反発の恩恵を受けることができた。
幸い雇用統計以降は米経済指標の堅調な結果が続き、インフレの鈍化も見られたため、円高が重しになったとは言え日本株も比較的スムーズに反発した。
8/5にはそう簡単に全戻ししないと思ったが、8月最終日の8/29には日経平均終値で38,647円まで戻し、9/2には場中に39,080円をつけ、日銀が利上げした7/31以来の39,000円台を見ることができた。

過ぎてみて

今回の急落を世間では植田ショック、日銀ショックなどと呼んだ。しかし当然その要因は日銀利上げとタカ派会見を発端とする円キャリートレードの巻き戻しだけでなく、ソフトランディングまたはノーランディングと思われていたアメリカの景気後退懸念の高まり、中東情勢の緊迫、増え続けるシステムトレード・高速トレードによる相場の動きの過激化といった様々な要因が複合的に重なった結果と見るのが妥当だろう。
リーマンショック時の金融システムの破綻のような大きなことには繋がらないと思ったので、今回は8/5の午後も取れるリスクの範囲内で買い越す(=損切りしない)という判断になったが、優れたベテラントレーダーの中には、8/5に大きく損切りした人もいたようだ。その人たちがどういったスタイルでトレードしていてどれくらいのリスクを取っていたのかを知らないので一概には言えないが、長く相場で勝ち残る秘訣は、そういうところにあるのかもしれない。

ひと月を振り返ると、8/5には年初来マイナスまで突き抜けたが、信用維持率が危険な状態になることもなく、結局終わってみれば8月は前月比+1.8%のプラスで終わった。もっと勝ち越している人はいくらでもいるだろうが、その一方で一撃退場した人や心の折れた人が(某王子以外にも)たくさんいた様なので、御の字の結果だろう。
事業でも相場でも、リスクをコントロールしないと簡単に破滅を迎えることができる。昔からそういった話はよく見聞きしたが、今回は相場においてそれをより深く体験したことになる。
実はチャイナショックもVIXショックもコロナショックも、インデックスと中長期保有の現物株だけで迎えているので、適当に買い増すか、反発までに買い増せないまま終わっており、相場についてそれほど強烈な記憶が残っていない。そんなだから、自分がリスクを取ってトレードをしている中で今回のショックを迎えられたのは良い経験になった。